アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎とは、痒みを伴う湿疹が繰り
返して起こる炎症性皮膚疾患です。この病気は
乾燥肌（ドライスキン図1ｂ）とこれに伴う皮膚の
バリア機能が低下している人に認められます。
バリア機能が低下すると、皮膚は様々な外的
刺激の影響を受けやすくなります。
アレルゲンは皮膚を通過しやすくなり、アレル
ギー反応を起こし湿疹が形成されます。湿疹が
できると痒いので掻いてしまい、湿疹が更に
悪化するという悪循環が起きてしまいます。
このようにアトピー性皮膚炎の主因は、ドライ
スキンとそれに伴うバリア機能の障害だと考え
られています。
　　　正常皮膚（図1a)                      　　　　 ドライスキン（図1b)

 

（MinonR）
 
アトピー性皮膚炎の治療
 
1）保湿剤
ドライスキンの人では角質層内の水分が不足
しているので、ヒルドイドソフトや尿素製剤
のような親水性保湿剤で水分を補給します。
バリア構造が回復すると、「アレルゲンの
侵入防止→皮膚炎の再燃防止」につながります。
障害された皮膚のバリア機能を回復維持する為
には、白色ワセリン等の保護作用のある軟膏を
使用します。よく用いられる外用剤について
表2にしめします。
 

保湿剤
1）皮表の保湿
ヘパリン類似物質	ヒルドイドクリーム　ヒルドイド軟膏　ヘパリンスプレー
尿素製剤	ケラチナミンコーワ　パスタロンソフト　ウレパールクリーム
2）皮表の保護
白色ワセリン	白色ワセリン　プロペト
亜鉛華軟膏	亜鉛華軟膏
その他	アズノール軟膏

2）抗炎症外用薬
アトピー性皮膚炎の炎症を抑える事のできる
薬の中で、有効性と安全性が証明されている
のはステロイド軟膏とプロトピック軟膏です。
 
a）ステロイド：ステロイド外用薬はアトピー
性皮膚炎の基本となる薬です。強さは5ランク
に分かれており（表3）、皮疹の重症度に応じ
て適切な強さの薬を用います。

ステロイド外用剤のランク
ストロンゲスト（1群）
	デルモベート
	ジフラール
ベリーストロング（2群）
	アンテベート
	ジフルブレドナート（マイザー）
	ネリゾナ
ストロング（3群）
	エクラー
	メサデルム
	フルコート
ミディアム（4群）
	リドメックス
	レダコート
	キンダーべート
	ロコイド
ウィーク（5群）
	プレドニゾロン

 
皮疹の重症度（図1）に応じて最適なランク
のステロイドを使用します。ドライスキンの
子供には十分な保湿剤を塗布して挙げてくだ
さい。小児の場合、最重症でなければ
ストロング（3群）ないしミディアム（4群）
クラスのステロイドで対処できます。
 
小児の場合、短期間で効果が表れやすいので
寛解状態に達すれば、ランクの低いステロイ
ド或いは保湿剤に切り替えて経過を見ます。
強い薬を長期間使用すると、皮膚の萎縮等の
副作用が起こる事があります。
 
 
b)プロトピック：プロトピックの薬効はステ
ロイド換算でストロング（第3群）位に位
置しますが顔（特に瞼）や頸部の病変の場
合に使用します。皮膚に細菌感染や“びらん”
がある場合は使用できません。
 
ｃ）抗ヒスタミン薬
アトピー性皮膚炎は痒みを伴います。痒みが
あるとひっかいてしまい、湿疹が悪化してし
まいます。又ひっかいてしまうと、皮膚感染
症が起きたり、眼の合併症が、起きうるので
痒みのコントロールが必要です。
適切に抗ヒスタミン薬を使用すれば早めに緩解
状態に達し使用するステロイドのランクを下げ
る事が可能です。
 
ｄ）悪化因子の検索
次にアトピー性皮膚炎皮膚炎を悪化させ得る
要因について考えてみましょう。
➀赤ちゃんの場合口の周りの食物の汚れ等が
あると悪化する事があります。よごれは、
お母さんの手で洗うか、木綿タオルで洗いま
しょう。ナイロンタオルなどでは.赤ちゃんの
角質が傷つくこともあるので注意してください。
②唾液、汗、で悪化すある場合もありますが
これも上と同じ要領です。
③食物アレルギーの子供でアトピーがある場合、
まず十分なステロイド外用治療を行ってみまし
ょう。それでも十分な結果が得られない場合、
アレルゲンの同定を考えるべきと思われます。
不適切な食事制限を行うと成長、発育障害が起
こる事があり、注意が必要です。
④ダニ、ハウスダスト、花粉、ペットの毛等の
環境アレルゲンが悪化因子になる事がある。
⑤汗と高温多湿環境はアトピー性皮膚炎を悪化
させる事が」あります。
⑦細菌(黄色ブドウ球菌), 真菌(カンジダ,
マラセチア)がアトピー性皮膚炎の悪化
 因子として考えられる場合があります。
 
 

                 
 
　　   　
        ①ドライスキン
　　
            

 
             　
        ③アトピー性皮膚炎(中症)
　   
         
　　 ④アトピー性皮膚炎(重症)